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社会福祉士

2013年11月 5日 (火)

認知症と電車事故による賠償

少々、前のニュースですが、

2007年、愛知県内で認知症を持つ男性が電車にはねられ死亡した事故がありました。2000年から認知症の症状が出始めた男性は、徐々に要介護度が上がり、要介護4となりました。デイサービスに週6日通い、妻と長男の嫁が介護にあたっていました。事故は妻がまどろんだすきに家を出て、線路内に入り電車にはねられて死亡しました。

鉄道会社はこの事故により遅延が発生したとして、遺族に対し、720万円の損害賠償を求め、裁判となりました。裁判では男性の徘徊は予見できたと認定しました。裁判所の判決は鉄道会社の主張を全面的に認め、損害賠償全額を認める判決を下しました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013082902000171.html

判決で賠償責任ありとされたのは、死亡した男性の妻と長男です。妻は85歳で要介護1でした。長男は横浜市在住でしたが、自分の妻を男性の近所に転居させ、介護にあたらせていました。自らも月3回ほど訪問し実質的に介護方針や体制を決めていたとのことです。

この男性には、長男以外にも子どもがおりました。介護を補助する子どももおりましたが、中には家族会議に参加せず、介護に関わっていない子どももいました。判決は長男以外の子どもは賠償責任なしとしたのです。

同じ家族でありながら、責任を持って介護に関わった者が賠償責任を負わされ、そうでなかった者が賠償責任なしとされてしまった判決です。自ら責任を負って介護にあたった長男はなぜこの電車事故でさらに賠償責任まで負わされなくてはならなかったのでしょうか?さらに85歳の要介護1の妻にまで賠償責任を負わせたのはなぜなのでしょうか?

介護の問題に対して家族はどう向き合っていったらよいのでしょうか。

2012年12月30日 (日)

医療モデルと生活モデル

医療モデルと生活モデル。聞きなれない言葉かもしれませんが、医療や福祉の世界では時々使われる言葉です。特徴をまとめると下のようになります。

★医療モデル

・個人の行動や特性

・疾病、傷害

・治療、リハビリ

・行動変容

・障害の見立て

・生命尊重

・原因追究重視

★生活モデル

・社会との関係や状況

・個性、特性

・生活

・環境調整、改善

・困りの見極め

・生活尊重

・関係改善重視

医療モデルは、どちらかというと、ご本人に頑張っていただくといった視点でしょうか。一方で、生活モデルは周囲の環境を整えるといった視点でしょうか。医療や福祉の場において何らかの課題がある場合、これらのモデルが活用されることがあります。

例として、脳こうそくの患者さんに対して、本人に頑張ってもらいリハビリをおこなうというのは医療モデルの考え方です。自宅をバリアフリーにする、歩行器などの補助機器を使って生活しやすくするのは、生活モデルの考え方になります。どちらが良いとか悪いといったことはありません。必要に応じて使い分けていく必要があります。しかし時に、このモデルは対立を生むこともあります。

私はかつて知的障害児者の施設で生活指導員として働いていました。男子の成人施設に配属され、30人という小さな規模の施設だったため、わりと家庭的な雰囲気の中で利用者は生活していました。私は旅行好きということもあって、その施設で働いている間、年2回の宿泊旅行の企画をずっと担当していました。利用者の希望に沿って、今度はどこへ旅行しようかと企画していました。成人の施設ということもあり、宿泊先ではいつも宴会が行われました。普段は飲酒の機会もめったにないので、こういった時は希望者にはお酒を提供していました。利用者もそれをとても楽しみにしていました。

ある年の旅行の時です。いつものように楽しく旅行を終え、数日後の職員会議で旅行の反省会を開きました。その会議の席で、新任の看護師がこう切り出しました。「疾病管理されている人に、お酒を飲ませるとはどういうことですか。何かあったら誰が責任を取るんですか?」この発言に会議の席は沈黙となり、最終的には以後の旅行では飲酒は一切禁止となってしまいました。

社会福祉の研修において、利用者の要望と、その利用者にとって必要なことが対立した時に、どう考えたら良いかという演習がしばしば出されます。この場合は、楽しみのための飲酒が「要望」になり、疾病管理のため飲酒は禁止するというのが、「必要」なこととなります。

確かに利用者の健康を考えれば、飲酒はさせないというのは正しい選択肢であるのでしょう。一方で成人利用者にとって数少ない飲酒の機会は、生活するうえで楽しみだったに違いありません。

こうした課題は本人、家族はもちろんのこと支援者もなかなか結論が出せないこともあります。医療は命を守り、福祉は生活を守るといわれることがあります。どちらも大切な考え方ですが、現実の支援の中でどうバランスを保ったらよいのかは容易ではないというのが正直なところです。

2012年11月 2日 (金)

聞く力

阿川佐和子さんの著書「聞く力」~心をひらく35のヒント~を読んでみました。彼女が司会を務めているTVタックルを時々視聴することがありますが、あれだけの強者ぞろいのメンバーの中で、ブレのない、とても好感のもてる司会ぶりに感心していました。

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そんな中で出版されたこの本を読んでみたのですが、ソーシャルワーカーとしての基本となる事柄がバッチリ、しかもわかりやすく書いてあります。改めて、人の話をどう聞けばよいのか、整理できたような気がしました。

多くの人は「聞く」ことよりも「話す」ことのほうが興味があったりします。人に話を聞いてもらいたいと思っています。一方で聞き役であるはずの対人援助職であっても、聞く力をきちんと持つことはなかなか難しかったりします。利用者から相談を受け聞いているつもりが、いつの間にか自分ばかりが話しているなんてこともあったりします(反省・・・)。

この本は聞くことの大切さをわかりやすく教えてくれます。ソーシャルワークの教科書としても十二分に活用できるのと思うくらいの良書です。

ぜひご一読を。






2012年10月20日 (土)

二重の不安

このところ相談がとても多くなっています。特に多いのが成年後見に関することなのですが、それ以外にも様々な相談があります。相談において大切なことはやはり「聴く」ということで、よく福祉の分野では「受容と共感、そして傾聴」などといったことが言われます。相談者の話をきちんと受けとめ、気持ちを理解し、しっかりと耳を傾けるということなのですが、この傾聴というのはなかなか難しいものです。

利用者の方は必ずしも私と価値観が同じわけではないので、話を伺っていると自分の価値観と違った話がいろいろと出てくるわけです。そういう状況の中では、自分の中では「違うなぁ。」「嫌だなぁ。」といった否定的な感情が出てくることも少なくありません。私自身も年齢を重ね人生経験を積んでくると価値観が定まり、固まってきてもいるので、若い時以上に柔軟に話を伺うことが難しいと感じる時もあります。

また、利用者の方はいろいろな意味で不安を抱えています。「二重の不安」という言葉があって、これは福祉の支援を求めている人は2つの不安を抱えながら相談にやってくるというものです。不安の一つは福祉に関する課題そのもの、つまり介護が必要になった、生活資金が足りない、家族から虐待を受けている、といった課題そのものということになります。

もう一つの不安は、そういった課題を相談した時に、相手の相談員がきちんと丁寧に話を聴いてくれるだろうかどうかということです。福祉の課題だけでも、実は大変なことなのに、その大変なことを初対面の人に話すというのは、とてもデリケートな感情が織り込まれ、絡み合っているわけです。

私自身も公私にわたって相談をお願いすることがあります。そういったとき、電話口の相手の声色、窓口の相手の表情、こういった要素がとても影響を与えるといったことによく気づかされます。自分も相談をしながら「こうありたいなあ」「これでは困るな」といった感情が出てくるわけです。これらのことを自分の日々の相談に生かしたいところですが、忙しさを理由に、なかなか傾聴できていない自分に、もどかしさを覚える今日この頃です。

反省・・・。

2012年10月 2日 (火)

障害者虐待防止法施行

10月1日から障害者虐待防止法が施行されました。各地域の自治体でも様々な活動や取り組みが展開されてくるものと思われますが、大切なこととして各市町村に虐待に関しての相談窓口ができたことではないかと思います。

虐待という問題はとてもデリケートな問題です。「もしかして虐待?」と思っても、その情報がきちんと伝わっていかなければ、正しく解決されないことも多くあります。そういった意味では相談窓口の役割はとても大切なことだと思います。

児童、高齢者、そして障害者と3つの虐待防止法が施行されましたが、法ができる以前は必ずしも適切に解決されていないという歴史がありました。法の施行によってこうした課題が迅速に解決されることが期待されます。

もう一つは法の施行によって、一般市民が関心を持つようになることだと思います。児童虐待の通報件数はものすごい勢いで増えましたが、児童虐待防止法が施行されたこともその一つの要因と思われます。法の施行によって一般市民に虐待に対する意識が高まり、通報や相談をすることが多くなってきたと思われます。

虐待について多くの一般市民が関心を持ち、きちんと相談できる窓口が増えてきたことは、虐待を防ぐ大きな役割を果たすと思われます。

私が所属する群馬県社会福祉士会でも、県民に向けて虐待対応に関する講座を始めています。多くの県民に関心を持ってもらえればと願っています。

今日のニュースに障害者虐待に関する記事がありました。これも障害者虐待防止法施行がきっかけとなっているかと思われます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121002-00000011-mai-soci

2012年9月 1日 (土)

障害者虐待防止法

障害者虐待防止法が今年の10月から施行されます。というわけで群馬県主催で社会福祉士会が委託を受けて開催した障害者虐待防止研修をスタッフ兼受講者として受けてきました。

Dsc_0292_4会場となった群馬県庁29階からの風景です。

児童虐待防止法の施行が平成12年、高齢者虐待防止法の施行が平成18年、それらから遅れてようやく施行となります。基本的な虐待防止法がようやく整ったといった感です。

法律の中身は、高齢者虐待防止法がベースになっているように思われます。虐待の種類として、

①身体的虐待

②性的虐待

③心理的虐待

④ネグレクト(必要な世話を怠ること)

⑤経済的虐待

の5種類になります。

また、虐待の被害者(被虐待者)の支援だけでなく、虐待を行っている家族(養護者)の支援も行われるのが特徴です。虐待を行っている人を罰するだけでは虐待はなくならないといった考えから来ています。

虐待対応の責任主体は市町村にあることも明記されました。これによって家庭内等へ立ち入り調査もできるようになります。これまでこういった虐待がおこっても責任主体がなかったため、発見者である民生委員やケアマネージャーなどが対応に苦慮することもありましたが、これからは市町村が責任主体として対応することになります。

虐待を行うものの想定として、家族などの養護者、施設職員、そして職場の上司などが想定されています。

全ての市町村に「市町村虐待防止センター」が設置され、都道府県には「都道府県権利擁護センター」が置かれることになります。

すこしずつ体制が整備されていくことを期待したいものです。

2012年8月12日 (日)

求刑を超す判決

7月30日に大阪地裁で、姉を刺殺したとして殺人罪に問われた被告への判決が下されました。検察側の求刑は懲役16年でしたが、判決は殺人罪有期懲役刑上限の20年でした。

被告にはアスペルガー障害があり、社会生活になじめず、様々な困難があったようでした。被告の世話をしていたのは、姉でしたが、きょうだいという近い関係であったがゆえに、かえって姉に対して否定的な感情が募っていき、犯行に及んだことが推測されます。

裁判においてはアスペルガー障害の影響があったことは認定しています。しかし判決は「社会内で受け皿が用意されていない現状のもとでは、再犯の恐れが強く心配され、それゆえ長期間刑務所に収容することで内省を深める必要があり、それが社会秩序の維持にも資する。」としています。

犯した犯罪は決して許されるものではありません。しかしながらこの判決には障害者に対する偏見や差別の助長につながる懸念があります。社会での受け皿がないから刑務所に収容するというのは、なんとも不可解な判決と言わざるを得ないと思います。

本件については日本社会福祉士会の会長声明が出されています。

日本社会福祉士会の会長声明

http://www.jacsw.or.jp/15_TopLinks/oshirase/files/seimei.pdf

ニュースから

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/citizen_judge_system/?1344743917

2012年6月20日 (水)

子育てテラス ひなたぼっこ

子育てテラス ひなたぼっこ

今年度からはじめた新しいサービス事業です。

当ハウスでは音楽療法事業の付加価値サービスとして、福祉相談援助業務を行っていますが、当ハウススタッフの新たな提案もあって、今回、新事業として始まりました。

障害がある子の、親御さんのサークルは様々な地域においてありますが、歴史を重ねてくるといろいろな課題が出てくるようです。メンバーが増えるにつれて、子どもの年齢や個性が多様化してきます。それに伴いメンバーやその親御さんのニーズも多様化してきます。そうなってくると限られた資源の中で、多様化するニーズに対応するのにはとても工夫が必要なようです。

そういったことから親御さんによっては、どこへ行ったらよいのか選ぶのに迷われる方も少なからずいらっしゃるようです。

そういった事情を背景に、「子育てテラス ひなたぼっこ」は生まれました。第1回目の集まりが今日行われ、臨床心理士の方をゲストに招いて、親御さんに集まっていただきました。普段の音楽療法の時間では、なかなかお聴きすることのできない、貴重な話を皆さんから伺うことができました。

当面は2か月ごとに開催していく予定です。子育て中の親御さんにふらっと寄っていただき、お茶を飲みながら気軽に話ができる場にしていきたいと思っています。

2011年8月24日 (水)

老後の・・・

書籍の紹介です。

西垣千春著「老後の生活破綻」中公新書

新聞に紹介されていたので、お取り寄せして読んでみました。

日本はいまや超高齢化社会。いずれ近い将来、65歳以上人口は40%を超え、一方で14歳以下人口は10%になるそうです。高齢化社会の特徴を示す言葉として健康、家族、収入があり、どれか一つでも問題が生じると、途端に生活は大きな影響を受けることになります。様々な事例も掲載されています。ここでも健康、家族、そして収入に絡むことがいろいろと取り上げられています。いろいろと考えさせられる本です。

思うのですが、今の日本はいろいろと便利なシステムが備わっています。でもそれらを利用できるのは健康や収入といったことが備わっていることが前提になっているように思われます。たとえば、大型のショッピングモール。様々な店舗が入っていて商品も豊富で値段も安く、買い物にはとても便利に思われます。しかしたとえば高齢者の方にとってはどうでしょう。そこへ行く手段は主には自家用車であることが多いでしょう。またたくさんの店舗がありフロアも広大なため、きちんと情報が整理されないと、どの店でどう買い物したらよいか分からない場合もあるかもしれません。

高齢者によっては、自宅から歩いて行ける小さな店のほうが便利だったりすることもあるでしょう。いまはそうした小さな店がどんどん閉店していたりします。一見便利と思われるシステムも、角度を変えて眺めてみると違った見え方になったりするのではないでしょうか。

2011年7月28日 (木)

福祉が・・・

先日、何気なく本屋に入り、「福祉コーナー」の棚を眺めていたら、ずっと気になっていた本を見つけたので買い求めました。

「福祉」が人を殺すとき あけび書房 寺久保光良著

何とも衝撃的なタイトルですが、私が社会福祉士を目指して大学で勉強していた十数年前「社会福祉原論」テキストの中に、この本が紹介されていました。1987年のこれから日本がバブル景気に向かおうとしていた時期に、30代の母親が生活保護を受けられず、子供3人を残して餓死してしまうという事件です。テキストの中では概略だけの紹介だったので、なぜ?という思いが強かったのですが、本を読み進めていくうちに、ようやく理解することができたような気がします。

日本でバブル景気だったのはずいぶん前のこと、今は不景気の嵐で、生活保護担当部署にはいつも多くの人が相談に来ています。初版は1988年出版ですが、今こそ改めて読んでみる価値のある本だと思います。

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